【2026年10月1日施行】カスハラ・セクハラ対策義務化 直前チェックリスト|今すぐ確認すべき5つのこと

チェック項目にチェックが入っているか虫眼鏡で確認する

2026年10月1日、カスタマーハラスメント(カスハラ)対策および求職者等に対するセクシュアルハラスメント(セクハラ)対策が、企業の法的義務となります。根拠となるのは、令和8年10月1日に施行される改正労働施策総合推進法です。※1

本記事では、「カスハラ・セクハラ義務化のチェックリストを今すぐ確認したい」という経営者・人事担当者の方に向けて、2026年10月1日施行の直前対応まとめをお届けします。

💡 この記事でわかること

  • 2026年10月1日に施行されるカスハラ・セクハラ対策の要点
  • 自社の対応状況を即座に把握できるセルフチェックリスト
  • チェックが×だった項目に対して、今から間に合う最短対応
  • 対応しなかった場合に企業が直面する法的・経営的リスク

2026年10月1日、何が変わるのか

これまでカスハラ対策については、厚生労働省が2022年に「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」(令和3年度厚生労働省委託事業)を策定し、企業の自主的な取り組みを促していました。今回の法改正により、対策が明確な「措置義務」として位置づけられました。※2

具体的に企業が講ずべき措置の内容は、2026年(令和8年)2月26日に公布された厚生労働省告示(令和8年厚生労働省告示第51号)「事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」に示されています。※3

対象は、労働者を1人でも雇用するすべての事業主です。大企業・中小企業・個人事業主を問わず、経過措置もありません。※4

直前セルフチェックリスト(○×で確認)

ペンでチェックシートにチェックを入れる

以下の6項目は、厚生労働省の指針および「事業主が講ずべきハラスメント対策パンフレット」(厚生労働省)が示す措置義務の内容をもとに構成しています。※5

① 方針の明確化・周知はできているか

事業主はカスハラを職場において生じさせてはならないという方針を明確に示し、従業員および顧客等に対して周知・啓発しなければならないとされています。

💡確認ポイント:

  • カスハラ・セクハラを許容しないという会社の基本方針を文書化しているか
  • 経営者・管理職が明確な姿勢を示し、従業員に周知しているか
  • 自社WebサイトやポスターなどでカスハラNGの姿勢を社外にも発信しているか

よくある未対応パターン:「口頭では伝えているが文書化していない」「就業規則には書いていない」

② 相談窓口は設置・周知されているか

相談窓口の設置・運用体制の整備が事業主の措置義務として定められています。

💡確認ポイント:

  • 従業員がカスハラ・セクハラ被害を相談できる窓口を設置しているか
  • 窓口の担当者・連絡先・利用方法を全従業員に周知しているか
  • 担当者が相談対応の基本的な手順を理解しているか

よくある未対応パターン:「人事部に言えばいいことになっているが、正式な窓口として案内していない」「担当者に研修を受けさせていない」

▶ 関連記事:ハラスメント相談窓口の義務化とは?弁護士が教える設置手順と運用の注意点

③ 相談対応の記録体制はあるか

相談者・行為者のプライバシー保護と、相談したことを理由とした不利益取扱いの禁止も措置義務として定められています。

💡確認ポイント:

  • 相談を受けた際の事実確認・対応・結果を記録する仕組みがあるか
  • 記録を適切に保管し、プライバシーを保護する体制があるか
  • 相談者が不利益を受けないよう周知されているか

よくある未対応パターン:「対応はしているが記録に残していない」「相談したことで不利益を受けないという周知が不十分」

④ 管理職・従業員への研修は実施したか

従業員への研修・周知が方針の明確化と一体の措置として求められています。

💡確認ポイント:

  • 全従業員に対してカスハラ・セクハラの定義や対処法を研修したか
  • 管理職に対して、被害発生時の初期対応・部下の保護について研修したか
  • 研修の実施記録が残っているか

よくある未対応パターン:「入社時のみで定期研修をしていない」「管理職向けの研修をしていない」

厚生労働省「あかるい職場応援団」では事業主向けのオンライン研修講座も提供されています。※6

▶ 関連記事:中小企業におけるハラスメント研修の重要性と実施のポイント

⑤ 悪質なカスハラへの抑止措置はあるか

厚生労働省の指針では、カスハラ対応の実効性を高めるための「抑止措置」として、悪質な行為への対処方針の策定・具体的な対処手段の整備・警察や弁護士との連携体制の構築が事業主の措置義務として定められています。※3

💡確認ポイント:

  • 著しい暴言・脅迫・不当な長時間拘束など、特に悪質なカスハラに対する拒否・対処方針をあらかじめ定めているか
  • サービス提供の拒否・停止、出入り禁止、警告文の発出など、具体的な対処手段を整備しているか
  • 悪質なケースに備えて、警察や弁護士との連絡ルート・連携手順を事前に整えているか

よくある未対応パターン:「クレーム対応マニュアルはあるが、悪質ケース向けの対処方針が定められていない」「警察通報や法的措置のルートが決まっていない」

⑥ 就業規則等への明記はできているか

就業規則や服務規律への条項の明記が方針の明確化・周知の具体的手段として示されています。

💡確認ポイント:

  • 就業規則にカスハラ・セクハラ対策に関する条項を追加・改定したか
  • カスハラ対応マニュアルを作成・整備したか
  • 就業規則の改定内容を従業員に周知したか

よくある未対応パターン:「古い就業規則のままになっている」「マニュアルがない、または古い内容のまま」

結果状況
全て○基本的な対応は完了しています。実効性の確認・定期見直しを行いましょう。
1〜2個×優先度の高い項目から今すぐ着手してください。
3個以上×早急に専門家への相談を検討してください。

現在、吉野モアでは「カスハラ・セクハラ対策」に関する企業様からのご相談を承っています。

  • 相談窓口の対応フローを整えておきたい
  • 就業規則の条項がカスハラ・セクハラに対応できているか確かめたい
  • カスハラ・セクハラに対する社内の意識を高める研修を行いたい

このようなお困りごとをお持ちでしたら、まずは個別相談ご予約ください。

今からできる最短対応

メモを取りながらヒアリングを行う3名の社員

最優先:方針の明確化と相談窓口の設置

まず経営者が「カスハラ・セクハラを許容しない」という方針を明文化し、従業員に周知することから始めます。相談窓口は、既存の人事担当者を窓口として指定し、その旨を社内に案内するだけでも一定の体制が整います。外部の弁護士事務所に窓口を委託することも有効な選択肢です。

次の優先:就業規則の改定と研修の実施

就業規則への条項追加は、弁護士に依頼すれば短期間で対応可能です。研修については、厚生労働省「あかるい職場応援団」が提供するオンライン研修講座も活用できます。※6

記録体制の整備

相談記録のフォーマットを用意し、プライバシー保護のルールを文書化します。専用システムが必要なわけではなく、担当者が統一した様式で記録を残す仕組みがあれば最低限の要件を満たします。

抑止措置の整備

悪質なカスハラへの対処方針を文書化し、具体的な対処手段(サービス拒否・警告文発出等)と警察・弁護士との連携フローをマニュアルに追記します。既存の就業規則やカスハラ対応規程の改定と合わせて整備するのが効率的です。

完璧を目指して後回しにするより、不完全でも今すぐ着手することが重要です。

対応しなかった場合のリスク

謝罪会見で頭を下げる3名の会社役員

① 行政指導・企業名公表のリスク

厚生労働省の指針に沿った防止措置を講じていない事業主は、是正指導や勧告の対象となる可能性があります。是正に応じない場合、企業名が公表されることがあります。パワハラ防止法と同等の法構造のもとで運用される見通しです。※7

② 安全配慮義務違反による損害賠償リスク

労働契約法第5条に基づき、事業主は従業員が安全かつ健康に働けるよう配慮する「安全配慮義務」を負っています。カスハラ・セクハラ被害を認識しながら放置し、従業員がメンタル不調や離職に追い込まれた場合、安全配慮義務違反として損害賠償を請求されるリスクがあります。

③ 人材流出と採用難

「会社は守ってくれない」と感じた従業員の離職率が上がり、人手不足が深刻化するリスクがあります。

制度の詳しい解説は別記事へ

各制度の詳細や具体的な対応手順については、以下の解説記事をご覧ください。

▶ カスハラ対策義務化の全体像・4つの措置の詳細:
【2026年10月施行】カスタマーハラスメント対策の義務化|企業が今すぐ準備すべき4つの措置【弁護士解説】

▶ セクハラ対策義務化・採用面接における対応:
【2026年10月施行】採用面接のセクハラ対策が義務化|中小企業が今すぐ整えるべき社内規程と相談窓口

まとめ

2026年10月1日の施行まで残りわずかとなりました。カスハラ・セクハラ対策は、①方針の明確化、②相談窓口の設置・周知、③記録体制の整備、④研修の実施、⑤抑止措置の整備、⑥就業規則への明記、の6項目が基本となります。

×があった項目は、完璧でなくてもまず着手することが重要です。「何から始めればいいか分からない」「自社の対策が十分か確認したい」という方は、ぜひ当事務所までご相談ください。

記事監修

吉野モア法律事務所 代表

弁護士:吉野誉文

京都大学法科大学院卒業 大阪弁護士会所属。
2022年に吉野モア法律事務所を開所し、主に中小企業のコンプライアンス問題や外国人労働者等の労災・労務問題、事業リスク・事業開発に伴う法的アドバイス等を実施。
直近は「トラブルが起こる前に備える」企業法務を目指し、組織づくりや次世代経営者育成なども手掛けている。

出典
※1 厚生労働省「令和7年の労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(労働施策総合推進法)等の一部改正について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/zaitaku/index_00003.html
※2 厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」(令和3年度厚生労働省委託事業)
https://www.mhlw.go.jp/content/11921000/000894063.pdf
※3 厚生労働省「事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和8年厚生労働省告示第51号、令和8年2月26日公布)
※4 厚生労働省「あかるい職場応援団」改正労働施策総合推進法等特設ページ
https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/foundation/law-amendment/
※5 厚生労働省「事業主が講ずべきハラスメント対策パンフレット」
https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/assets/pdf/pawahara_gimu.pdf
※6 厚生労働省「あかるい職場応援団」オンライン研修講座
https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/learning/
※7 厚生労働省「カスタマーハラスメント対策・セクシュアルハラスメント対策 義務化リーフレット(令和8年施行)」
https://jsite.mhlw.go.jp/chiba-roudoukyoku/content/contents/casuhara_leaflet6P.pdf