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日本国内の人手不足を背景に、製造業や建設業などの現場で外国人労働者の方々が活躍する姿が日常のものとなっています。しかし、現場作業が多い業種では、どれほど安全に配慮していても労災のリスクをゼロにすることはできません。
いざ自社の外国人スタッフがケガをしてしまったとき、「言葉が通じなくて状況が把握できない」「日本人と同じ手続きでいいのだろうか」「行政への届出を間違えたら処分を受けるのではないか」とパニックになってしまう経営者や総務担当者の方は少なくありません。当事務所にも、外国人雇用を行う企業様から「現場で事故が起きてしまったが、まず何から手をつければいいのか」という切実なご相談が数多く寄せられています。
この記事では、外国人労働者に労災が発生した際の具体的な初動対応から、行政への報告手続き、対応を誤った際のリスク、そして事後に見直すべき体制まで、弁護士の視点からわかりやすく解説します。
💡この記事でわかること
外国人労働者であっても、日本の労働法が全面的に適用されます。正しい知識を持って迅速に対応することは、被災した従業員を救うだけでなく、会社を法的なリスクから守ることにも繋がります。
吉野モア法律事務所では、外国人雇用をご検討中・実施中の企業様の支援実績が豊富にございます。外国人雇用関連のご相談についての詳細は以下ページをご覧ください。
現場で事故が発生した際、最も重要なのは「迅速な救命と治療」です。これは従業員の国籍を問いません。しかし、外国人労働者の場合は「言語」や「在留資格」という特有の要素が絡むため、初動での意識的な配慮が必要になります。
事故が発生した直後は、以下の4つのステップを迅速に行ってください。
基本原則として、「労災保険の適用」や「生命・安全を守る義務」は日本人と全く変わりません。外国人であっても、技能実習生であっても、在留資格の期限が切れているオーバーステイの状態であっても、日本国内で労働者として働いていた以上、労災保険は100%適用されます。
一方で、日本人への対応と明確に変わる点は以下の通りです。

労災が発生した場合、会社は労働基準監督署などの行政機関に対して、法的に定められた報告や申請を行う義務があります。これを怠ると、いわゆる「労災隠し」として厳しく処罰される可能性があります。
会社が必ず行わなければならない代表的な手続きは以下の2つです。
労働者が業務中や通勤中にケガをし、休業または死亡した場合に労基署へ提出する義務があります。提出期限は休業日数によって異なります。
この書類には、事故の具体的な原因や発生状況を記載する欄があります。第2章で記録した写真や聞き取りメモをもとに、正確な事実を記載してください。外国人労働者の氏名は、在留カードに記載されているアルファベットや漢字の表記通りに正しく記載する必要があります。
被災した労働者が治療費の免除を受けたり、休業中の賃金補償を受けたりするための手続きです。
結論から申し上げますと、労基署に提出する申請書や報告書はすべて「日本語」で作成・提出しなければなりません。
しかし、労災保険の請求書には、被災した本人の署名や捺印、あるいは事故状況に関する本人の申し立て内容を記載する部分があります。本人が内容を理解していない状態でサインをさせることは、後々のトラブルを招くため絶対に避けてください。
実務上の対応としては、以下の方法を推奨します。

「外国人だから少し手続きが遅れても大丈夫だろう」「小さなすり傷・打撲だし、本人が大丈夫と言っているから報告しなくていいや」といった軽い気持ちでの初動の誤りや遅れは、会社経営を揺るがす甚大なリスクへと発展します。
最も重い法的リスクは「労災隠し」による処罰です。労災が発生したにもかかわらず、労働者死傷病報告を提出しなかったり、虚偽の報告をしたりした場合、労働安全衛生法第120条に基づき、「50万円以下の罰金」が科されます。
罰金50万円なら大したことはないと思われるかもしれませんが、本当のリスクは金額そのものではありません。
行政からの処分だけでなく、労働者本人やその家族との間で泥沼の民事紛争に発展するケースも増えています。当事務所でも、初期対応を誤ったがために数千万円規模の損害賠償請求にまで発展してしまった企業様からの相談を受けた実績があります。
外国人労働者の労災対応や初動に不安がある場合は、事態が深刻化する前にお気軽にご相談ください。
不幸にも労災が発生してしまった場合、それを単なる「事故」として終わらせるのではなく、二度と同じ悲劇を繰り返さないため、そして会社の防衛のために、社内体制を根本から見直す機会にする必要があります。
まずは、外国人労働者向けの就業規則や雇用契約書の文面を確認してください。
これらが曖昧なままだと、労災の認定を巡って会社と労働者の意見が対立した際に、就業規則が会社を守る盾になってくれません。
※ 関連記事:就業規則、形骸化していませんか?服務規律・解雇ルールの見直しポイント
労災が発生したということは、現場の安全指示や危険予測が労働者に正しく伝わっていなかった可能性があります。「日本語で一通り説明して、本人が『はい』と言ったから理解しているはずだ」という思い込みは非常に危険です。彼らの「はい」は、「あなたの言葉は聞こえました」という意味であって、「内容を理解し、危険性を認識しました」という意味ではないことが多々あります。
以下の具体的な対策を社内で徹底してください。
外国人労働者の労災対応において、最も大切なことは「日本人と区別せず、法律に則って迅速かつ誠実に初動対応を行うこと」、そして「言葉や文化の壁に配慮し、本人の不安を徹底的に取り除くこと」です。
外国人労働者であっても、日本の強力な労働法と労災保険制度が労働者を守ってくれます。これを正しく活用せず、隠蔽しようとしたり、対応を後回しにしたりすることこそが、会社にとって最大のリスクとなります。
しかし、実際の現場では、怪我の程度に応じた臨機応変な判断が求められ、提出書類の書き方一つとっても「これで本当に足りているのだろうか」と不安になる場面が多いのが現実です。労働者側やその家族、監理団体との関係が少しでもこじれそうだと感じた場合は、事態が深刻化する前に、ぜひお早めに弁護士へご相談ください。
なお、労災を未然に防ぐための具体的な予防策や事前対策については、以下の別記事でさらに詳しく解説しています。ぜひ合わせてご一読いただき、事故のない現場づくりにお役立てください。
※ 関連記事:外国人労働者の労災リスクと予防策|企業が負う安全配慮義務と事前対策

吉野モア法律事務所 代表
京都大学法科大学院卒業 大阪弁護士会所属。
2022年に吉野モア法律事務所を開所し、主に中小企業のコンプライアンス問題や外国人労働者等の労災・労務問題、事業リスク・事業開発に伴う法的アドバイス等を実施。
直近は「トラブルが起こる前に備える」企業法務を目指し、組織づくりや次世代経営者育成なども手掛けている。
参考資料
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