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取引先の企業規模が大きいからと、言われるがままに不利益な条件を受け入れてはいませんか?そんな不公平な取引を防ぐために存在するのが「下請法」です。
本記事では、下請法の基本的な知識から、具体的にどのような行為が違反にあたるのか、下請法違反行為を受けた企業が取るべき対策までを、専門弁護士がわかりやすく解説します。

吉野モア法律事務所 代表
京都大学法科大学院卒業 大阪弁護士会所属。
2022年に吉野モア法律事務所を開所し、コンプライアンス問題や外国人労働者等の労災・労務問題、事業リスク・事業開発に伴う法的アドバイス等を実施。
直近は「トラブルが起こる前に備える」企業法務を目指し、組織づくりや次世代経営者育成なども手掛けている。
「下請代金支払遅延等防止法」、通称「下請法」は、企業の取引において、規模の大小に関わらず、優越的な地位を利用した不公正な取引が行われることを防ぐために存在する法律です。下請事業者が安心して取引でき、その利益が守られることを目的としています。
なお、令和8年1月に施行される改正法では、法律の名称が「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」に変更となるとともに、適用対象となる会社や取引の範囲が拡大され、禁止行為も追加されることが決定しています。
下請法は、すべての取引に適用されるわけではありません。法律が適用されるかどうかは、以下の4つの要件をすべて満たしているかによって判断されます。
下請法が適用される取引は、大きく分けて以下の4種類です。

親事業者(委託する側)と下請事業者(委託される側)の資本金の関係によって、適用されるかどうかが決まります。具体的な対応表は以下の通りです。
| 取引内容 | 親事業者の資本金 | 下請事業者の資本金 |
|---|---|---|
| 製造委託・修理委託・情報成果物作成委託(プログラム以外)・ 役務提供委託(運送・建設業以外) | 3億円超 | 3億円以下 |
| 製造委託・修理委託・情報成果物作成委託(プログラム以外)・ 役務提供委託(運送・建設業以外) | 1千万円超3億円以下 | 1千万円以下 |
| 情報成果物作成委託(プログラム)・役務提供委託(運送・建設業) | 5千万円超 | 5千万円以下 |
| 情報成果物作成委託(プログラム)・役務提供委託(運送・建設業) | 1千万円超5千万円以下 | 1千万円以下 |
原則として、日本国内の取引に適用されます。
一度きりの単発的な取引ではなく、事業として反復継続的に行われる取引であることが前提となります。
下請法が適用される取引では、親事業者には、下請事業者の利益を守るために以下の4つの義務が課せられます。これらの義務は、下請法を遵守するために最も基本となるルールです。
発注に際し、直ちに以下の事項を記載した書面(発注書や契約書)を下請事業者に交付しなければなりません。口頭での発注はトラブルの元であり、原則禁止です。

下請事業者が納品(役務の提供完了)した日から60日以内のできる限り短い期間内に、下請代金の支払期日を定めなければなりません。
定めた支払期日までに代金を支払わなかった場合、納品日から60日を経過した日から、実際に支払いを行う日までの期間について、年率14.6%の遅延利息を支払う義務があります。
取引に関する書類(発注書、受領書、代金支払いに関する証憑など)を、取引終了後2年間保存しなければなりません。
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親事業者が優越的な地位を利用して、下請事業者に不当な不利益を与えることを防ぐため、下請法は以下の11項目を禁止しています。
| 禁止行為 | 具体的な事例 |
|---|---|
| 1. 受領拒否 | 下請事業者が納入した物品の受け取りを、親事業者の都合で拒否すること。 |
| 2. 下請代金の支払い遅延 | 60日以内の定めた支払期日までに代金を支払わないこと。 |
| 3. 下請代金の減額 | 下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに、発注時に取り決めた代金を一方的に減額すること。「協賛金」「リベート」などの名目での要求も違法になる場合があります。 |
| 4. 返品 | 下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに、納入された物品を返品すること。 |
| 5. 買いたたき | 通常支払われる対価よりも著しく低い額を不当に定めること。 |
| 6. 強制的な購入・利用 | 親事業者の指定する物品や役務を下請事業者に強制的に購入・利用させること。 |
| 7. 報復措置 | 下請事業者が公正取引委員会などに親事業者の違反行為を知らせたことを理由に、取引を停止するなど不利益な取り扱いをすること。 |
| 8. 不当な経済上の利益の提供要請 | 下請事業者の利益を不当に害する形で、金銭や役務の提供を要請すること。 |
| 9. 不当な給付内容の変更・やり直し | 費用を負担せず、一方的に発注内容を変更させたり、やり直しをさせたりすること。 |
| 10. 有償支給材等の対価の早期決済 | 親事業者が下請事業者に無償で支給した原材料などを、下請代金から不当に早期に差し引くこと。 |
| 11. 割引困難な手形の交付 | 支払期日までに現金化が困難な手形(支払サイトが長いなど)を下請代金の支払いに用いること。 |
特に、「買いたたき」や「下請代金の減額」は、知らず知らずのうちに違反しているケースが多く、注意が必要です。
※取引先からの過剰な要求や著しい迷惑行為については、こちらの記事(中小企業経営者が知るべき「カスタマーハラスメント」とは)もご覧ください。
もし、親事業者から不当な代金の減額や支払いの遅延など、下請法違反にあたる行為を受けた場合、下請事業者は下記のような手段の検討が必要です。
まず最初に行うべきは、親事業者に対し、下請法に基づいた是正を求めることです。
この際、法的な根拠を示しながら書面(内容証明郵便など)で冷静に通知することが重要です。これにより、証拠を残すとともに、親事業者に事態の重大性を認識させることができます。
【記載すべき内容の例】
親事業者との直接交渉で是正されない場合や、報復を恐れて直接交渉が難しい場合は、第三者機関に助けを求めることができます。
下請法を所管しているのは公正取引委員会と中小企業庁です。これらの機関は、下請事業者の秘密を守りつつ、親事業者への調査や指導・勧告を行う権限を持っています。
これらに相談することで、下請事業者が直接動かなくても、行政が親事業者へ指導してくれる可能性があるため、報復のリスクを低減できます。

是正要求に応じてもらえない、あるいは取引そのものを継続できなくなったために損害が発生した場合は、弁護士に相談し、法的な手段を検討します。
【弁護士による法的措置】
弁護士は、法律の専門家であるだけでなく、交渉の専門家でもあります。取引継続の可能性や法的なリスクを総合的に判断し、下請事業者にとって最善の解決策を提案します。
下請法は、公正な取引を守るための重要な法律であり、親事業者・下請事業者ともに正確な知識を持つことが非常に大切です。下請法に違反した場合、公正取引委員会による調査(立入検査など)が行われ、勧告や公表といった措置が取られるだけでなく、企業の社会的信用が大きく損なわれたり、悪質な場合には罰金などの刑事罰が科せられたりする可能性もあります。
そのため、少しでも取引の条件設定や契約書の内容に不安がある、または取引先との間で不当な要求を受けていると感じた場合は、問題が大きくなる前に適切に対処することが重要です。そして、最終的な判断は専門家に相談することを強くお勧めします。
当事務所では、下請法の遵守体制構築や、取引トラブルに関するご相談も承っております。お気軽にご連絡ください。
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