未払い発生時の対応策と未払い防止のための仕組み作り

企業にとって「売掛金の未払い」は経営を揺るがしかねない深刻な問題です。取引先からの入金が滞ると、資金繰りが悪化し、自社の経営にも大きな影響を与えかねません。本記事では、未払いが発生した際に取るべき具体的な対応策と、そもそも未払いを防ぐための仕組作りについて分かりやすく解説します。

記事監修

吉野モア法律事務所 代表

弁護士:吉野誉文

京都大学法科大学院卒業 大阪弁護士会所属。
2022年に吉野モア法律事務所を開所し、コンプライアンス問題や外国人労働者等の労災・労務問題、事業リスク・事業開発に伴う法的アドバイス等を実施。
直近は「トラブルが起こる前に備える」企業法務を目指し、組織づくりや次世代経営者育成なども手掛けている。

未払いが発生した場合の対応手段

万が一未払いが発生してしまった場合は、以下のような手段で対応していくことが必要です。

  1. 取引先への督促
  2. 内容証明郵便の活用
  3. 訴訟・保全・強制執行
  4. 弁護士への相談・依頼

取引先への督促

未払いが発生した場合、まずは取引先に対して迅速に督促を行うことが重要です。未払いから時間が経過すればするほど債権回収のリスクが高まるためです。まずは電話やメール、書面などで支払いを促し、支払い意思や理由を確認します。督促の際は感情的にならず、事実関係を冷静に伝えることが円滑な解決につながります。

内容証明郵便の活用

通常の督促で支払いがなされない場合、内容証明郵便を送付する方法があります。内容証明郵便は、送付した文書の内容や日付を証明する証拠として有効であるだけでなく、相手方に対して支払いの意思を強く促すことができます。

訴訟・保全・強制執行

最終手段として、裁判所を利用した法的手続を検討します。訴訟を提起し、判決が確定した場合には、強制執行によって資産の差押えなどを行うことが可能です。また、相手方が資産を隠したり処分したりする恐れがある場合には、事前に裁判所に仮差押えや仮処分を申し立てることで、資産の流出を防ぐことが可能です。これらの手続は専門的な知識が必要なため、弁護士に依頼するのが一般的です。

弁護士への相談・依頼

自力での回収が難しい場合や、相手方との交渉がこじれてしまった場合には、早めに弁護士へ相談することをおすすめします。弁護士が介入することで早急に適切な対応が可能となります。

未払いを防ぐための仕組みづくり

上記は実際に未払いが発生してしまった場合の対応策ですが、未回収リスクや回収コストを低減させ、経営を安定化させるためには、そもそもの未払いを防ぐための仕組み作りがより重要となります。

ここでは、大きく以下4点をご紹介します。

  1. 信用調査の実施
  2. 取引実態に沿った契約書の作成
  3. 請求・入金管理の徹底
  4. 担保や保証人の設定

信用調査の実施

新規取引先と契約する際は、事前に信用調査を行い、相手方の経営状況や支払い能力を把握しておくことが重要です。特に高額な取引の場合は、帝国データバンクや商工リサーチなどの信用調査会社を活用することでリスクの高い取引先を見極めることができます。

取引実態に沿った契約書の作成

口頭や簡易な書面だけで取引を進めたり、取引の実態に沿わないひな形をそのまま使用してしまったりすると、契約内容について双方の認識にずれが生じ、その認識のずれが未払いの原因になる恐れもあります。またそれだけでなく、未払い発生時に証拠が不十分となり、本来支払ってもらうべき金額の回収ができなくなってしまう恐れもあります。支払条件や納品条件、遅延時の対応などを明記した契約書を必ず作成し、双方で内容を確認しましょう。契約書には、遅延損害金や解除条項なども盛り込むと、未払い時の抑止力となります。

※契約書の管理と運用については、こちらの記事(その契約書、本当に役に立ちますか?契約書の管理方法と運用の基本)もご覧ください。

請求・入金管理の徹底

請求書の発行や入金管理を徹底することも、未払い防止の基本です。請求書は納品後すみやかに発行し、入金予定日を明記します。入金状況は定期的にチェックし、遅延が発生した場合には早期にアクションを取る体制を整えましょう。

担保や保証人の設定

取引金額が大きい場合やリスクが高い場合には、担保や保証人を設定することも有効です。不動産などの担保を取ることで、万一未払いが発生した際の回収可能性が高まります。また、連帯保証人を付けることで、取引先が支払不能となった場合でも保証人から回収できる可能性があります。

まとめ

債権回収は、未払いが発生してからの対応だけでなく、未然に防ぐための仕組みづくりや予防策が極めて重要です。日頃から契約内容や入金管理を徹底し、リスクの高い取引には担保や保証を付けるなど、万全の体制を整えておきましょう。そして、万が一未払いが発生した場合には、早期に適切な手段を講じることが、スムーズな回収につながります。債権回収や未払い防止の仕組み作りについて困ったときは、弁護士に早めに相談することをおすすめします。