ハラスメント再発防止策を徹底解説!企業の信頼を守る具体的な手順とは

ハラスメント再発防止策

ハラスメントの再発防止は、企業経営における喫緊の課題の一つです。ハラスメントが発生してしまった場合、その後の対応次第で、企業の信頼は大きく損なわれることになります。そのため、一度発生したハラスメントをいかに二度と起こさないようにするかは、単なる道義的な責任ではなく、企業に課せられた重要な法的義務であり、この義務を果たすことが結果的に企業の持続的な成長へと繋がります。

この記事では、ハラスメントの再発防止策に焦点を当て、企業の信頼を守るために 具体的に何をすべきか、弁護士の立場から実践的なステップをご紹介します。

記事監修

吉野モア法律事務所 代表

弁護士:吉野誉文

京都大学法科大学院卒業 大阪弁護士会所属。
2022年に吉野モア法律事務所を開所し、コンプライアンス問題や外国人労働者等の労災・労務問題、事業リスク・事業開発に伴う法的アドバイス等を実施。
直近は「トラブルが起こる前に備える」企業法務を目指し、組織づくりや次世代経営者育成なども手掛けている。

なぜハラスメントの再発防止が企業の責務なのか

ハラスメントが発生した場合、企業にはその事実を調査し、適切な措置を講じる法的義務があります。特に、労働施策総合推進法(パワハラ防止法)や男女雇用機会均等法などに基づき、企業は職場におけるハラスメントを防止するための措置を講じることが義務付けられています。

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単なる「事後対応」で終わらせてはいけない理由

ハラスメントの事案への対応が、行為者の処分や被害者への謝罪などの「事後対応」だけで終わってしまうと、根本的な原因が残存し、類似の事案が再び発生するリスクが極めて高まります。

再発を許すことは、企業が「ハラスメントを容認する組織」であるとの印象を社内外に与え、

  • 従業員の士気低下、優秀な人材の流出
  • 採用活動への悪影響
  • 企業ブランドの毀損、取引先からの信頼喪失
  • 損害賠償請求や行政指導のリスク増大

など、計り知れない損害をもたらします。したがって、「再発防止策の策定と実行」こそが、ハラスメント対応の最終かつ最も重要な目的となります。

ハラスメントの再発防止を確実にするための「三本柱」

ハラスメントの再発防止を実効性のあるものにするためには、以下の三つの柱をバランス良く実行することが不可欠です。

  1. 組織全体の方針の明確化・相談に適切に対応する体制の整備
  2. 迅速かつ公正な事後対応
  3. 再発防止を目的としたフォローアップと環境改善

組織全体の方針の明確化・適切に対応する相談体制の整備

相談窓口に相談する従業員

最も根本的な防止策は、ハラスメントが起きにくい企業風土を醸成することです。そのためには、具体的に以下のような取り組みが求められます。

規程の整備と周知の徹底

  • 就業規則やハラスメント防止規程に、ハラスメントの定義、禁止行為、懲戒規定を明確に定め、全従業員に周知します。
  • 特に、事案発生後の「再発防止」に関する具体的な取り組みも盛り込みます。

全従業員への継続的な研修

  • ハラスメントの定義や具体例だけでなく、「グレーゾーン」の行為、アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)についても学びます。
  • 管理職に対しては、部下の状況を把握し、早期に介入・指導するスキル(特に傾聴力やフィードバック方法)に特化した研修を実施します。

相談窓口の独立性・利用しやすさの確保

  • 社内窓口に加え、従業員が安心して利用できる外部の弁護士や専門家による相談窓口を設置します。
  • 相談者のプライバシー保護を徹底し、不利益な取扱いをしない旨を明確に保証します。

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迅速かつ公正な事後対応

ハラスメント発生後の迅速な調査と事後対応

事案発生時に公正な対応ができれば、「問題を見過ごさない」というメッセージが伝わり、抑止力に繋がります。

公正な事実調査と処分

  • 事案発生時は、第三者的な視点を持った調査チーム(必要に応じて外部弁護士が関与)が迅速かつ公平に事実調査を行います。
  • 調査結果に基づき、懲戒処分を適用する場合は、就業規則に則り、適正な手続きを経て厳正に行います。

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再発防止を目的としたフォローアップと環境改善

具体的な事案の対応完了後も、環境改善のための措置を講じる必要があります。

被害者・行為者の分離とケア

  • 被害者の意向を尊重した配置転換、勤務場所の変更などを行い、安心して業務に復帰できる環境を整えます。
  • 行為者に対しては、単に懲戒処分で終わらせず、ハラスメントの背景にある問題行動を改善するための研修やカウンセリングを義務付けます。

組織風土の診断

  • 事案が発生した部署だけでなく、会社全体でアンケート調査などを実施し、組織風土やコミュニケーションに潜むリスク要因を特定し、改善に繋げます。

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ハラスメント再発防止策の具体事例

ここでは、実際にハラスメントが発生した組織で、再発防止策を講じた事例をご紹介します。

【事例】営業部における上司のパワハラが常態化していたケース

【発生した事案の概要】

営業部において、上司Aが部下Bに対して、大声での叱責、個人の能力を否定する発言、長時間労働を強いるなどのパワハラ行為を長期間行っていました。被害者Bが退職を決意したことで事態が発覚しました。

【事実調査で判明した問題点】

  1. 上司Aの属人的な権限が強すぎた。
  2. 「成果至上主義」の企業文化が過度で、多少のハラスメントは「指導」として見過ごされる雰囲気があった。
  3. ハラスメント相談窓口が形骸化しており、機能していなかった。

講じた再発防止策

区分具体的な防止策目的
組織・
体制
懲戒規程の厳罰化:パワハラの程度に応じた懲戒を明確化し、管理職はより重い処分を科すことを明記。
外部弁護士による通報窓口の設置:匿名性を担保し、社内窓口に言いづらい声も拾い上げるルートを確保。             
「ハラスメントは許されない」という明確なメッセージの発信。相談のハードルを下げ、問題の早期発見・早期解決を図る。
迅速かつ公正な事後対応「第三者性」を確保した調査体制発生部署や上司Aと利害関係のない部門の者、および外部の弁護士を含めた調査委員会により事実調査を行い、適正な手続を経て懲戒処分を行った。第三者による調査と、それに基づいた厳正な懲戒処分を行うことで、全社に対して「ハラスメントは指導として見過ごされず、厳しく対処される」というメッセージを発信。
環境改善「成果至上主義」の見直し事案が発生した営業部に対し、目標設定と評価制度を抜本的に見直し。成果だけでなく、プロセスやチームへの貢献、部下育成の姿勢を評価項目に明確に組み入れる。成果達成に対するプレッシャーが行き過ぎた指導や人格否定へと直結する組織的な構造を改善。

これらの対策を講じた結果、営業部内でのコミュニケーションの質が改善し、その後の深刻な事案の再発は防止されました。

まとめ

ハラスメントの再発防止は、企業のコンプライアンス遵守と、持続的な成長のために欠かせない投資です。一度立ち止まり、規程の整備、研修の徹底、そして外部の視点を取り入れた相談窓口の設置という三つの柱を、実効性のある形で確立することが、再発防止の鍵となります。

当事務所では、貴社の現状をヒアリングさせていただき、ハラスメントが再発しないような組織づくり、実効性の高い規程整備、そして従業員が安心して利用できる相談窓口の設置など、トータルでの支援を行っております。

ハラスメントの問題でお困りの際は、手遅れになる前に、ぜひお気軽にご相談ください。