企業を守るために知っておきたい!コンプライアンス違反事例集

コンプライアンス違反事例集

近年、「コンプライアンス(法令遵守)」という言葉を耳にしない日はありません。しかし、その重要性を頭では理解していても、「うちは大丈夫だろう」「小さな会社だから関係ない」と考えてしまってはいないでしょうか。ひとたびコンプライアンス違反が発生すれば、長年築き上げてきた企業の信頼は一瞬にして崩れ去り、経営そのものが危ぶまれる事態にもなりかねません。今回は、よくあるコンプライアンス違反の事例をご紹介し、それらが起こってしまう原因と、企業が講じるべき具体的な対策について解説します。

身近に潜むコンプライアンス違反の事例

「コンプライアンス違反」と聞くと、巨額の横領や大規模な粉飾決算などをイメージするかもしれません。もちろんそれらも重大な違反ですが、より日常的な業務の中にもリスクは潜んでいます。

事例1:ハラスメント(パワハラ・セクハラ等)

職場における優位な関係を背景に、業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動を行うパワーハラスメントや、相手が不快に感じる性的な言動を行うセクシャルハラスメントは、代表的なコンプライアンス違反です。 「指導のつもりだった」「コミュニケーションの一環だった」という言い訳は通用しません。

平成17年の三井住友海上火災保険上司事件(東京高判 平成17年4月20日)では、上司が部下に対し、他の社員からも見られる形で「やる気がないなら、会社を辞めるべきだと思います」などと記載された電子メールを送信。指導の範囲を逸脱した不法行為に当たり、上司にパワーハラスメントの意図がなかったと認定されたにもかかわらず損害賠償請求が認められました。

うつ病になってしまった従業員

事例2:情報の持ち出し・漏洩

顧客データや独自の技術情報などを、許可なく社外に持ち出す行為です。「自宅で仕事をするためにデータをUSBメモリに移した」という、悪意のない行動から紛失・流出事故につながるケースも後を絶ちません。

過去には、トヨタモビリティ東京で従業員が個人情報を含むデータを私物のUSBメモリに保存していたところ、当該USBメモリを紛失してしまったという事件がありました。当該USBメモリは拾得物として返還されたものの、情報が外部に流出していない確証が得られない状況であると報道されています。個人情報保護法に抵触する可能性もあり、企業に大きな損害を与えるリスクがあります。

企業の情報の持ち出し

事例3:過重労働・残業代の未払い

「サービス残業が当たり前になっている」「名ばかり管理職」といった労働基準法に関わる違反も、コンプライアンス上の大きな問題です。

日本マクドナルドの「名ばかり管理職」訴訟に代表されるように、役職名に関わらず、労働基準法上の「管理監督者」の要件は厳格に判断され、未払い残業代の支払いを命じる判決が相次いでいます。 従業員から未払残業代等の請求を受けてしまうだけでなく、労働環境の悪化は離職率の上昇や「ブラック企業」という悪評の拡散に直結します。

このように労働基準法に関わる違反は従業員から未払残業代等の請求を受けてしまうだけでなく、労働環境の悪化は離職率の上昇や「ブラック企業」という悪評の拡散に直結します。

ブラック企業で働くことで追い込まれる社員

なぜコンプライアンス違反が起きてしまうのか?

これらの違反事例には、共通する原因が見受けられます。それは個人の資質だけの問題ではなく、組織としての課題でもあります。

従業員一人ひとりのコンプライアンスに関する知識不足

コンプライアンス違反は、従業員が悪意を持って違反するケースばかりではありません。「これくらいなら大丈夫だと思った」「法律違反になるとは知らなかった」という、知識不足が原因であることも多いのです。

コンプライアンス違反を言い出せない職場環境

「上司の命令には逆らえない」「おかしいと思っても声を上げにくい」という風通しの悪い職場環境も、違反を助長させます。不正が隠蔽され続け、発覚したときには取り返しのつかない事態になっていることも少なくありません。

コンプライアンス違反を防ぐための仕組みづくり

コンプライアンス違反を防ぐためには、会社全体での具体的な仕組み作りが不可欠です。

継続的な「コンプライアンス研修」の実施

まずは従業員一人ひとりの意識を変えることが重要です。入社時だけでなく、定期的に研修を行うことで、最新の法改正に対応し、コンプライアンス意識を常に高く保つことができます。 研修の際は単に法律の条文を学ぶだけでなく、実際の事例を用いたケーススタディを行うなど、従業員一人ひとりが自分事として捉えられるような工夫が必要です。

コンプライアンス研修を受ける従業員

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「コンプライアンス委員会」や相談窓口の設置

問題が起きたとき、あるいは起きそうなときに、適切に対処できる体制を整えることも重要です。 社内に「コンプライアンス委員会」を設置して定期的にリスクをチェックしたり、従業員が安心して相談できる「内部通報窓口」を設けたりすることで、自浄作用のある組織を作ることができます。

相談窓口に相談する従業員

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まとめ

本記事で述べたように、コンプライアンス違反は決して大企業だけの話ではなく、他人事ではありません。ひとたび問題が発生すれば、社会的信用の失墜、損害賠償、取引停止など、企業にとって大きな損害が発生するかもしれません。

大切な会社と従業員を守るためには、「意識の醸成(研修)」と「管理体制の構築(委員会設置など)」の両輪が必要です。

当事務所では、貴社の実情に合わせたコンプライアンス研修や社内規定の整備、コンプライアンス委員会の立ち上げ支援、外部相談窓口の受託など、企業法務に関する幅広いサポートを行っております。 「今の体制で大丈夫か不安がある」「何から始めればいいかわからない」という経営者様は、トラブルが起きる前に、ぜひ一度お気軽にご相談ください。