実効性のある内部通報制度とは?弁護士が解説する内部通報窓口の役割と設置のポイント

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企業のコンプライアンス(法令遵守)が強く求められる現代において、内部通報制度は事業活動の健全性を保つための「生命線」とも言える重要な仕組みです。しかし、「制度を作ったものの、形骸化している」「通報窓口の役割がよくわからない」といったお悩みも少なくありません。

そこで本記事では、実効性のある内部通報制度とは何か、その核心となる内部通報窓口の役割、そして制度を機能させるための具体的なポイントを、弁護士の視点からわかりやすく解説します。

あなたの会社の内部通報制度のあり方を見直し、本当に機能する制度を構築するためのヒントにしてみてください。

記事監修

吉野モア法律事務所 代表

弁護士:吉野誉文

京都大学法科大学院卒業 大阪弁護士会所属。
2022年に吉野モア法律事務所を開所し、コンプライアンス問題や外国人労働者等の労災・労務問題、事業リスク・事業開発に伴う法的アドバイス等を実施。
直近は「トラブルが起こる前に備える」企業法務を目指し、組織づくりや次世代経営者育成なども手掛けている。

内部通報制度と内部通報窓口の基本

内部通報制度とは?

内部通報制度とは、企業が、企業内の法令違反や不正行為について、通報・相談を受けつけ、企業がこれに基づいて調査・是正措置を講じる一連の制度を指します。

これは、不正の早期発見と是正、そして企業の信頼を守るための内部通報窓口とは?その具体的な役割の重要な柱です。実際に、過去に消費者庁が実施した調査では、企業の不正発見の端緒として内部通報の割合が一番多くなっています。(※1)

そして、もし不正を放置すれば、企業は甚大な損害や社会的信用を失うことになりかねません。

​内部通報窓口とは?その具体的な役割

内部通報窓口は、まさに内部通報制度の「入り口」となる部分です。その役割は単に通報を受け付けるだけに留まりません。通報者にとっての「安全地帯」としての役割も担います。

【具体的な役割】

1.通報の受付

従業員等からの不正行為に関する情報(通報)を、漏れなく受け付けます。電話、メール、書面など多様な手段を用意します。

2.通報者の保護

通報者が不利益な扱いを受けないよう、通報内容や通報者に関する情報を厳重に管理し、匿名性・秘匿性を確保します。

3.調査・是正への橋渡し

受理した通報内容を精査し、必要に応じて調査部門へ情報を提供したり、是正措置の必要性を進言したりします。

※不正行為などのハラスメント発生時の調査については、こちらの記事(ハラスメント調査委員会の設置・運営マニュアル|公正な事実調査の進め方)もご覧ください。

ハラスメント調査のために聞き取りを行う

内部通報窓口の「設置義務」と法的な背景

公益通報者保護法による設置義務

公益通報者保護法が2022年6月に改正され、一定の事業者に内部通報制度の整備が義務付けられました。

  • 従業員数300人を超える事業者:
    内部通報に対応するための体制整備(通報窓口の設置、調査体制の確保など)が義務となります。
  • 従業員数300人以下の事業者:
    体制整備は努力義務ですが、中小企業においてもコンプライアンスの重要性は高まっており、設置が強く推奨されています。法令上の義務であるかどうかにかかわらず、企業倫理とリスク管理の観点から、全ての企業が実効性のある窓口を持つべきと言えます。

※中小企業におけるコンプライアンスの重要性については、こちらの記事(なぜ中小企業にこそ“コンプライアンス経営”が必要なのか?)もご覧ください。

実効性を高める内部通報窓口設計の重要ポイント

内部通報窓口は、単に設置するだけでなく、従業員が「安心して、気軽に」通報できる環境を整えることが実効性の鍵です。ここでは、窓口を設計する際に重要なポイントを解説します。

専門性」と「独立性」を備えた人材を担当者とする

内部通報窓口の担当者は、内部通報に対し独立した立場から調査を行う必要があり、加えて専門性も必要となります。社内に法務担当者がいる場合には、一般的には法務担当者が内部通報窓口の担当者となることが望ましいです。

また、必要に応じ弁護士などの第三者が運営する社外窓口の設置も検討してください。社外窓口はより高い公平性秘匿性が期待できることに加え、法律の専門家である弁護士は、通報内容を法的な観点から適切に整理し、通報者のプライバシーを厳格に守りながら対応できるため、通報のハードルを大きく下げ、制度への信頼を高めます。

法律の専門家である弁護士

通報者の保護を徹底する

「通報したら、会社に居づらくなるのでは?」という不安は、通報を躊躇させる最大の要因です。そのため、以下の点に注意する必要があります。

  • 匿名性の確保: 匿名での通報を可能にする仕組みを整えるなど、通報者の特定につながる情報の取り扱いを厳格にします。
  • 不利益取扱いの禁止: 通報者に対する不当な人事評価や懲戒処分などの不利益な取扱いを明確に禁止し、それを徹底します。このルールを社内規程として明確に定めることが重要です。

通報後のフィードバックを欠かさない

通報者が「通報したきり、何も変わらない」と感じてしまうと、制度への信頼は失われます。

調査の結果、不正が認められた場合、または認められなかった場合であっても、調査結果や是正措置の内容を、可能な範囲で通報者にフィードバックする仕組みが必要です。通報者が安心し、次回以降も通報・相談をためらわないようにするための、重要なプロセスのひとつです。

内部通報窓口の実効性を高め、コンプライアンスを強化

実効性のある内部通報制度は、企業の不正を未然に防ぎ、大きな社会的信用を失うリスクから会社を守る「防波堤」です。その中核をなす内部通報窓口は、設置義務の有無にかかわらず、全ての企業にとって欠かせない機能です。

そして、窓口の運営には、通報者保護の徹底、公平な調査、そして専門的な法律知識が求められます。「自社の制度が本当に機能しているのか不安」「改正法への対応について相談したい」といったお悩みがあれば、私たち弁護士にご相談ください。貴社の状況に合わせた最適な内部通報制度の設計・運用をサポートいたします。

※1: 参照元「消費者庁「平成28年度 民間事業者における内部通報制度の実態調査報告書