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「コンプライアンス経営が重要だ」と頭では理解していても、「具体的にどう社員に浸透させればいいのか」「研修に時間やコストをかける余裕がない」と悩む中小企業の経営者や人事担当者は少なくありません。
しかし、コンプライアンスに関する「知識不足」や「意識の低さ」は、ハラスメントや情報漏洩など、大きなリスクへと繋がる危険性を孕んでいます。本記事では、コンプライアンス意識を高めるためのコンプライアンス研修について、実施までの具体的なステップ、必須の研修ネタ、そして効果を最大化するためのポイントまで、企業のコンプライアンス強化を支援させていただいてきた経験を踏まえて解説いたします。
吉野モア法律事務所 代表
京都大学法科大学院卒業 大阪弁護士会所属。
2022年に吉野モア法律事務所を開所し、コンプライアンス問題や外国人労働者等の労災・労務問題、事業リスク・事業開発に伴う法的アドバイス等を実施。
直近は「トラブルが起こる前に備える」企業法務を目指し、組織づくりや次世代経営者育成なども手掛けている。
「コンプライアンス経営」が、もはや“守り”ではなく“攻め”の戦略であることは、過去の記事(なぜ中小企業にこそ“コンプライアンス経営”が必要なのか?)でも詳しく解説しました。その理念を組織全体に浸透させるためには、コンプライアンス研修が不可欠です。
特に中小企業において、コンプライアンス研修が必要な背景には、以下のような点が挙げられます。
知識・教育不足による無自覚な違反の防止
コンプライアンス違反の多くは、悪意ではなく「知らなかった」「問題だと思わなかった」という知識不足や認識不足が原因です。
例えば、ハラスメントの定義、個人情報の取り扱いルール、SNSでの情報発信のリスクなど、時代と共に変化する規範を従業員が体系的に学ぶ機会がなければ、意図せず違反を犯してしまう可能性が高まります。コンプライアンス研修は、こうした無自覚な違反を防ぐための重要な投資です。
時代の変化への対応と企業信頼の維持
10年前は問題にならなかった従業員の行動(SNSでの個人的発信、ハラスメントの認識など)が、今では企業の信用を揺るがす重大なコンプライアンスリスクとなる時代です。顧客、取引先、金融機関、そして求職者までもが、企業のコンプライアンス体制を重視しています。
コンプライアンス研修を通じて、時代に合わせた企業倫理を共有し、組織としての健全性を高めることが、企業ブランド価値の向上と信頼維持に直結します。
中小企業特有の課題解消
中小企業では、業務の属人化や口頭ベースでの指示、暗黙の了解に頼りがちな組織文化が強みとなる一方で、コンプライアンスリスクの温床となることがあります。
「何が正解か」が人によって異なり、判断に一貫性がなくなるためです。コンプライアンス研修は、これらの曖昧さをなくし、明文化されたルールと倫理観を全従業員で共有するための有効な手段となります。
効果的なコンプライアンス研修を実施するためには、単に知識を詰め込むだけでなく、従業員一人ひとりが「自分ごと」として捉え、行動変容を促すプロセスが重要です。ここでは、研修を成功させるための具体的なステップをご紹介します。
いきなり研修内容を決めるのではなく、まずは自社の現状を客観的に把握することが重要です。そのためには、従業員に対し、コンプライアンスに関する理解度や意識、職場での具体的な困りごとなどをアンケート形式で調査します。
~質問例~
ポイント:
現状調査で明らかになった課題や、特にリスクが高い項目、従業員の理解度が低い項目を特定し、研修のテーマを絞り込みます。この時、製造業であれば安全管理、建設業であれば下請法、サービス業であれば個人情報保護など、自社のビジネスモデルに合わせたテーマ設定が重要です。
研修内容が決定したら、効果的に知識を伝え、行動を促すためのカリキュラムを設計します。研修の基本的な設計は以下の通りです。
研修は一度実施して終わりではありません。その効果を測定し、継続的に改善していくことが重要です。
まずは研修後にアンケートやフィードバックを実施し、研修の成果を測定し、その後の研修に活用していくことが必要です。また、コンプライアンス意識が継続的に高まっているか、定期的に再調査することも忘れてはいけません。
ここでは、コンプライアンス研修のテーマとして抑えておきたい代表的なネタをいくつかご紹介します。
顧客情報・社員情報の適切な保管、廃棄方法、機密情報を含むデータの取り扱いルール、テレワーク環境でのリスク(自宅でのPC利用、公衆Wi-Fiの利用など)。
※情報セキュリティに関してはこちらの記事(個人情報保護と情報セキュリティ-法律事務所が教える企業の義務と対応)もご覧ください。
業務に関連する情報発信のルール、プライベートなアカウントでも個人の行動が企業ブランドに与える影響など。「軽い気持ちでの発信が大きなトラブルになる」具体的な事例で注意喚起をすることが大切です。
※SNSの取り扱いなどの現代的な懸念を含むルール作りについては、こちらの記事(就業規則、形骸化していませんか?服務規律・解雇ルールの見直しポイント)もご覧ください。
パワハラ、セクハラ、マタハラなど、様々なハラスメントの定義と種類、知らないうちに加害者にならないための価値観や受け取り方の違いを理解します。ハラスメントが起きた際の相談窓口や対処法も周知することがポイントになります。
※ハラスメント対策についてはこちらの記事(服務規律によるハラスメント防止策)もご覧ください。
労働基準法など、従業員の労働条件に関する基本的なルールの理解を促します。「違法残業」や不当な給与減額などのコンプライアンス違反を予防するための知識を共有します。
※労働法に関連するトラブルやルールに関しては、こちらの記事(就業規則どこから見直す?労務トラブル予防のポイント)もご覧ください。
Webサイトの画像、動画、音楽などの無断利用リスク、社内資料やプレゼン資料作成時の注意点など、ビジネスにおける信頼に関わる問題であることを強調します。
親事業者が遵守すべき事項(例: 支払期日の設定、不当な減額・返品の禁止)を解説し、取引先との公正で健全な関係を築くことの重要性を伝えます。
▼コンプライアンス研修やコンプライアンス経営の導入に役立つ情報は、吉野モア法律事務所のメルマガもご利用ください。
ここでは、コンプライアンス研修の効果を最大化し、コンプライアンス体制を強化するための重要なポイントを解説します。
対象者によって適切なテーマ・内容を選ぶ
研修のテーマや内容については、企業の中でもどのような役職・部署の社員が対象かによって、選定することが大切です。
役職別のテーマ例:
適切なタイミングかつ継続的に実施する
意識は時間と共に薄れていくものです。コンプライアンス研修は、一度やって終わりではなく必ず定期的に実施することが欠かせません。一般的には、半年〜1年に1回程度行うのが望ましいとされています。
また、新入社員入社後や組織に変更があった時、同業他社で問題が発生した時など、適切なタイミングでタイムリーに開催することも大切です。
学びやすい環境を整える
職場での対面研修を用意することも大切ですが、すべての社員が学びやすい環境を整えることも、コンプライアンス意識を高める上では重要です。オンラインセミナーやeラーニングの導入を検討することで、時間や場所に縛られず、個人のペースで学べる環境を提供できます。
必要に応じて外部の専門家を活用する
ここまで、自社でコンプライアンス研修を行う方法やポイントについてご紹介してきましたが、自社でのコンプライアンス研修実施には限界があります。最新の法改正への対応、複雑な事例の判断、客観的な視点の欠如といった課題が挙げられます。必要に応じて、外部の専門家である弁護士や外部講師を頼ることも成功のポイントです。
▼吉野モア法律事務所でも、コンプライアンス研修の設計や講師のご相談を承っています。
コンプライアンス研修は、単なる法令順守のための義務ではありません。従業員一人ひとりの意識を高め、組織全体でコンプライアンス体制を構築することは、企業の信頼性を高め、優秀な人材の定着を促し、そして何よりも、持続的な成長を実現するための重要な“攻め”の経営戦略といえるでしょう。ぜひ本記事を、コンプライアンス研修の設計や実行に役立てていただければと思います。
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